ファンタジア大賞出身作家インタビュー

紫大悟
第33回ファンタジア大賞《大賞》受賞作『剣と魔王のサイバーパンク』改題『魔王2099』でデビュー。2023年にはアニメ化も発表された。

ファンタジア大賞に初めて投稿する前に書いた文章で一番文字数の多いものは、大学の卒論でした。
今となっては提出した卒論程度の文章量なんかは書けないと話にならないのですが、執筆に至る第一歩は「卒論でたくさん文字書けたからいけるだろ!」というものでした。
そういう些細な事で一歩を踏み出せたから、今の自分があるんじゃないかなーと思っています。ちなみにその最初の作品は一次選考落ちでした。
あ、『魔王2099』、『断頭台の花嫁』発売中でーす。よろしくね。
魔王2099

イラスト:クレタ

受賞作は、どんな作品ですか?
『繁華街の薄汚いビルの屋上』みたいな作品です。
ファンタジーとサイバーパンク的SF要素をミックスさせた世界観で、ボロボロになった古い者たちが再起する物語となっております。
こういうのをジャンル的に何に分類すればいいかわかりませんが、僕はファンタジーパンクと自分の中で勝手に呼んでいます。流行んねえかな。
受賞作を執筆中に、特に意識していたことを教えてください(キャラやコンセプト、テーマ、文体など)。
ファンタジア大賞は一次選考を通過すると評価シートが貰えるので、評価シートのフィードバックは常に意識していました。
なぜ、それを意識されていたのでしょうか? 狙い・意図を教えてください。また、それは達成できていたと思いますか?
評価シートで、「確かに……」と反省する事や、良い評価が貰える傾向が読み取れたからです。
受賞するまでに投稿した作品の中で、ファンタジア大賞の三次選考以上(これは僕の中で重要視していた大きな壁が二次選考突破だったからです)に進めた作品は二作ありました。
「主人公に強い個性があった作品」が四次選考、「世界観に強い個性があった作品」が三次選考でした。
つまり、それらが"僕"がファンタジア大賞に投稿する上での強みなのだろうと考えました。
その強みを自分なりに分析、フィードバックを受けてキャッチーさや流行の要素を加えて完成したのが『魔王2099』(投稿時『剣と魔王のサイバーパンク』)でした。
投稿の中では王道ジャンルの一つであろうファンタジーに、異なるエッセンスを加える事で周囲と差別化を図るという狙いもありました。
自分の書きたい物、書ける物に加えて、『自分の何が強みなのか』という事を考えたのもこの作品でした。
《大賞》という栄誉ある賞を受賞できたという結果が、僕の狙い・意図を達成できた証明だと思っています。
ファンタジア大賞に投稿された理由はなんですか?
ライトノベルの入り口が、小学生の頃に図書館に置いてあった神坂一先生の『スレイヤーズ』だったからというのと、「そろそろなるか……ラノベ作家に……」と思い至って色々調べた際にファンタジア大賞ってネットから応募できるんだ! と最初に目に入ったのが理由です。
僕の中のこういったラノベの賞の応募って自分で原稿印刷して郵送するってイメージだったので、こりゃあ楽だなぁと時代の変化に感動した覚えがあります。
その後はほぼファンタジア大賞一本の勢いで投稿していました。
受賞するまでに、どのくらい書いて投稿してきましたか?
前期後期の応募に1作ずつのペースだったと記憶しているので年2本で、6~7年程投稿していました。1年だけ色々あって書かなかった時期があるので、12作程ですかね。
と思って今ファンタジア大賞のマイページ(まだ自分のページ残ってる!)の応募リストで調べたら11作でした。
受賞した際には是非マイページを覗いてみてください。
投稿後、「もっとこうしておけば」と思ったことがあれば教えてください。
特に面白みはないのですが、誤字脱字チェックです。
審査員の先生方に「ここ登場人物の名前全然違うねえ!」みたいな事を言われていた、という話を受賞後に編集さんづてに聞く機会があって、とても申し訳なく恥ずかしい思いをしたからです。
逆に言えばそういう大きな抜けがあっても《大賞》を取れるという事でもあるのですが、その辺を蔑ろにしていいという話では決してありません。
上述した通りもっとチェックしておけばと後悔しているので、ギリギリまで校正する事をおすすめします。
とはいえ誤字脱字を一人で全部潰すのは無理なので、完璧に仕上げようとして投稿できないとなると本末転倒なので程々に。
受賞作に対する評価については想定通りでしたか?
最終選考に残ったという連絡が来た時点で手応えは感じていました。
自分の中ではピーキーな作品だと思っていたので、題材的にも《大賞》か落選のどちらかだろうと考えていました。そういった意味では想定通りになるのでしょうか。
なんかスカした感じに言っていますが、《大賞》ですと言われた時は嬉しさと混乱で過呼吸気味になるくらい興奮したのを今でも覚えています。
受賞後、意外だったこと、大変だったこと、強く印象に残ったことなどを教えてください。
表彰の楯が結構重くてデケェ!
作品作りにおいて、何を重視していますか?
読み始めた時のワクワク感と読後感の良さです。
読み始めた時に「どうなるんだろう」という期待する気持ち、読み終わった後に「あ~面白かった」と本を閉じる時の気持ち。
僕がライトノベルを読んだ時の原体験を、僕の作品を読んだ人が味わってくれればいいな、と思っています。
これから、どんな作家になりたいですか?
ジャンルの流行の先駆けになりたいです。
「それ以前にもこういったジャンルの作品は多いけど、流行ったのはこの作品からだよね」
と言われる作品を生み出す作家になりたいですね。
これからファンタジア大賞へ応募する方たちへ、メッセージをお願いします!
受賞して賞金が手に入ったらいい椅子とコルセットを買いましょう。腰が何よりも大事なので。
確定申告周りなんもわからんってなったら税務署に相談に行きましょう。丁寧に教えてくれるので。
後やはりファンタジア大賞の《大賞》受賞というネームバリューってすげえんだな、って思う出来事がデビューしてからありました。
ファンタジア大賞に応募してよかったです、マジで。具体的な話をこの場でできないのが歯がゆい。
デビュー前はこのインタビューページで先輩作家様の言葉を読んでモチベーションを上げていました。
単に僕がこういうのを読むのが好きなのもありますが、応募する方の中にもこれを読んで僕のようにモチベーションを上げる方がきっといる事でしょう。
これを読んでいる貴方が、ファンタジア大賞に応募して、受賞して、このインタビューページに掲載される事を楽しみに、そして応援しています。
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