ファンタジア大賞出身作家インタビュー

竹町
第32回ファンタジア大賞で受賞させていただきました。
応募作を大改稿し、『スパイ教室』という作品を発表しました。なので、応募作と実際に販売された作品が別物というややこしい著者です。
応募作が編集部しか知らない幻の原稿になったので、ここで言う「受賞作」は実際に投稿した応募作ではなく、実際に販売された『スパイ教室』の話になります。あしからず。
スパイ教室

イラスト:トマリ

受賞作は、どんな作品ですか?
スパイ・ファンタジー。
スパイが暗躍する時代に、世界最強のスパイ・クラウスが新しい諜報機関『灯』を創設する。しかし、そこで集められたのは何故か未熟な見習いスパイ少女ばかり。クラウスが少女たちを集めた謎や画期的な指導法に戸惑いながら、彼らは死亡率九割の任務に挑戦していく——そんな物語です。
受賞作を執筆中に、特に意識していたことを教えてください(キャラやコンセプト、テーマ、文体など)。
二つ意識しました。
王道から外れないこと。オリジナリティを保つこと。
当たり前と言えば当たり前なのですが、特に前者は強い意識がありました。これらは応募原稿の執筆時も同じです。
なぜ、それを意識されていたのでしょうか? 狙い・意図を教えてください。また、それは達成できていたと思いますか?
ラノベでは馴染みのない題材を扱うので、王道から外れたら誰にも親しまれない作品になると意識していました。スパイを知らない読者に楽しんでもらう、つまり、分かりやすい作品にするには「カッコいい先生と、才能はあるが実力が発揮できない少女が偉業を成し遂げる」というフォーマットを崩すべきではない、と。
もちろん読者に印象を残すためオリジナリティも施しました。ストーリーの根本を壊さないギリギリを狙う、という意識で。
その狙いは達成できた——と作者が言えなければ、買っていただいた読者様に失礼なので、「達成できた!」とお答えします。
ファンタジア大賞に投稿された理由はなんですか?
過去の宣伝施策が印象に残っていたからです。特に第29回ファンタジア大賞、井中だちま先生の『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』の時は元々のタイトル自体が強烈でしたが、宣伝も含めて頭に残っていました。
受賞するまでに、どのくらい書いて投稿してきましたか?
おおよそ7年間、書き上がった作品をライトノベル編集部に送りつけてきました。これまで書いた長編の合計は二十本前後かと。
投稿後、「もっとこうしておけば」と思ったことがあれば教えてください。
もっとシリーズ物の勉強をしておけば、とは思いました。投稿中はライトノベルの新人賞を勝ち取るために、受賞作やヒット作の1巻を読むようにしてきました。その結果、受賞した電話の知らせを受けてから「あれ? シリーズ物ってどう物語を展開するの……?」と首を傾げ、人気シリーズ物の2巻を慌てて読み始める羽目に……。
もちろん1巻ばかりを読んでいたから受賞に繋がったと思うので、強い後悔ではないのですが。
受賞作に対する評価については想定通りでしたか?
想定以上でした。
受賞後、意外だったこと、大変だったこと、強く印象に残ったことなどを教えてください。
発売一週間後に参加した新年パーティで多くの先生方に褒めていただいたのは、強く印象に残っております。
作品作りにおいて、何を重視していますか?
皮肉です。
自分以外の作品を挙げるなら「弾丸一つで世界を改変する」「わくわくの冒険。ただし、実母同伴」「暗殺対象の少女を教育する」「魔術嫌いのロクデナシ教師が完璧な魔術講義をする」——。こういったアイロニーが効いた展開や設定が大好きです。決して王道を外さず、読者の興味を煽る、皮肉な展開。
「寿命寸前の愛の告白」「巨悪を倒す未熟な少年」「謎を解く最後の手がかりは、日常の中に」「完全無欠だった美女の意外な弱点」「タッグを組むのは、相性最悪の相手」
この辺はベタですけど、みんな好きでしょう?
これから、どんな作家になりたいですか?
娯楽性の高い作品を輩出できる作家でありたいです。今では重厚なテーマやしっとりした味わい深い作品も大好きですが、自分自身が学生時代にライトノベルに一番求めていたのは「あー、面白かった」と軽く言える作品だったので。
これからファンタジア大賞へ応募する方たちへ、メッセージをお願いします!
語れる創作論も精神論もない新人作家なので、発売直後の実感をお話しします。
「ファンタジア大賞はがっつり自著を宣伝してくれました」
記念デビューしたいだけなら、もっと応募総数が少ない新人賞をおススメします。
宣伝せずに大ヒットできる作品が書けたなら、ネット投稿をおススメします。
しかし、「しっかり宣伝してくれれば、俺の作品は売れまくるはずだ!」と確信するクリエイターには、このファンタジア大賞を強くおススメします。仮に一度失敗したとしても、再チャレンジする価値があるはずです。
これは2020年2月末における受賞者の一人である私の実感です。
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